プロジェクト紹介/現場レポート

  • 保健医療
  • 2021年02月 ~2021年04月
  • プロジェクト調査
【エジプト国】
UHC政策実施能力強化プロジェクト基本計画策定調査(医療保険、医療財政)

低中所得国(Lower-Middle Income Country: LMIC)に分類されるエジプトでは、1990年以降、母子保健指標や感染症関連指標が大幅に改善され、その関連効果の一端として、平均寿命が66歳(1990)から71歳(2015)に伸び、また95%の市民にとって保健施設5キロ圏内に存在するなど、保健サービスへのアクセスも改善された(2017)。一方で、心血管疾患や糖尿病等、非感染性疾患(NCDs)の罹患率や死亡率(死亡率全体の84%に相当)が急速に上昇するなど、疾病構造に大きな変化が見られ、新たな医療保健課題を投げかけている。

同国保健人口省(Ministry of Health and Population: MOHP)は、保健システムが抱える様々な問題を抱えており、公的医療機関の提供するサービスの質は概して低く、一般市民は脆弱層も含め、安価な公的保健サービスよりも高額の民間サービスを選ぶ傾向にある。また、増加する非感染性疾患等、慢性的な症状への対応が遅れており、母子保健についての必須保健サービスカバー率指数が81であるのに対し、非感染性疾患のカバー率指数は58にとどまっている。他方、旧来の医療保険制度は、公務員、フォーマルセクター雇用者、未就学児や学生など、人口の68%程度をカバーするものの、労働人口全体の64%程度にあたるインフォーマルセクターや非雇用者は全くカバーされていない。政府保健支出も、他の中東・北アフリカ諸国と比較して低く、国民による保健医療費自己負担率は60.1% と高く、人口の26.2%が医療費支払いにより家計破綻を起こしている。

エジプト政府は、こうした危機的状況に対応するため、すべての国民が質の高い保健サービスを享受できるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成を最優先事項に掲げ、2014年にはUHC達成を宣言した新憲法を樹立させた。また2018年には国民皆保険法(Universal Health Insurance Law: UHI Law)が制定され、公的保険への支出が増強されるとともに、医療保険制度が抜本的に改革されることとなった。具体的には、保険料の徴収、ファンド運用、医療機関への支払いを一貫して行う国民健康保険機構(Universal Health Insurance Agency: UHIA)が新たに創設され、UHI法下で適切な医療サービスを提供する医療機関であることを認証する認証基準機構(General Authority for Healthcare Accreditation and Regulation: GAHAR)や、認証された医療機関を管理する医療機関機構(General Authority for Healthcare Provider:GAHP)が設立された。

JICAは、こうした移行期におけるエジプトの支援ニーズと、同国からの技術協力の要請に基づき、国民皆保険制度の内容や運用実態について現状を把握し、またCOVID-19拡大による広範囲な影響にも配慮しつつ、同国の政府関係者や関係機関の能力強化を念頭においたプロジェクトの合意を目的とする本基本計画策定調査を実施することを決定した。弊社は、職員ガ調査団の一員として派遣し、協力計画策定のために必要な調査を行い、報告書のとりまとめなどの業務に従事しつつ、エジプト政府との基本合意書の作成等に協力するものである。

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